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S おもちゃ箱の夜 |
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緑色の月が口を開けて待ち構えていたから 彼女は導かれるまま眠りについた 僕は駆け寄ったが 届きはしなかった 伸ばした腕が触れることはなく 傘もささずに月光を浴びた やがて僕は ゆっくりと闇に飲み込まれる月のかわりに 夜空に突き刺さる虹を見るだろう 緑色の月を追って 巨大な虹の上を歩きながら ふと ほんとうにふと 僕は思う この虹の向こうにもうひとりの僕がいたなら そしてにっこりと手を差し伸べたなら 僕はその手を握り返すことを拒むだろうか? まぶたを閉じると彼女の姿が見える けれども彼女には決して僕が見えない 僕らは永遠にふれあうこともなく ただ無言のままで―― 傘もささずに月光を浴びる |
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