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D
S あの夏に手が届く |
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その夏はなんだかやけに暑くて、確かに冷房なしで乗り切るには多少酷な季節に思えた。だからだろうか、夏休みを寮に残って過ごそうという粋狂な輩は僕たちくらいのものだった。 普段学生がひしめき合っているあの建物を独占できる。そのことが僕たちには嬉しくて仕方なかった。 終業式を終えても僕たちは何となく教室に残り、いつものように他愛のない話題でふざけ合いながら、これから始まる夏休みへの期待に胸を躍らせていた。 そう、それが、僕たちのあの不思議な体験の、はじまりだったのだ。 |
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