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S 俺の拳が天を打つ |
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俺たちが手に入れたのは中古の船だった。現オーナーの事務所で文字通り金貨を積み上げ、引き換えに権利書を受け取った。サインをしたのは姐さんだ。 モノは港に停泊させてあり、現地の船舶事務所で最終的な受け渡しが行われることになる。俺たちは権利書とオーナーの紹介状を持ってさっそく港へ向かうことにした。大枚を叩いた直後なので、徒歩だ。 この辺りは実にのどかな田園風景が続く。収穫の時期にはまだ遠く、青々とした田畑にぽつりぽつり見える農夫たちは、のんびりと雑草を取り除いたり増え過ぎた株を間引いたりしている。上空を滑る鳥が時折畦に羽を休めに来る。 「ねえねえ」歩きながら嬢ちゃんが屈託なく言った。「お船、誰が操縦するの?」 残るメンバー――但しオーを除く――が、一斉に立ち止まって顔を見合わせた。そして一瞬の沈黙の後、 「オッサンが」「御主が」俺とオッサンが同時に口を開いた。「するんだろう?」 姐さんが、はあとため息をついた。 「つまり――二人ともできないわけね?」 「自分だってだろ。しょうがねえ、船頭雇おうぜ」 簡単に言わないでよと姐さんは苦い顔をした。 「船頭ってアンタ、竿一本で操れる小船とはワケが違うわよ。それにね、人雇ってる余裕なんてないわ、経済的に」 立ち止まるタイミングがずれたため俺たちより数歩離れたところにいたオーが、大袈裟に肩をすくめた。 「仕方ありません。習得するしかないでしょう」 「習得?」 「そうです。全行程に付き添う船頭は雇えずとも、講師を一二日つける程度なら大丈夫ですよね?」 矛先を向けられて姐さんが頷いた。ちょっと上を見上げたのは、残りの所持金を思い出して勘定したのだろう。オーは、それならば、と続けた。 「船舶事務所で人を頼みましょう。明日中に覚えれば、明後日には船を出せます」 「船の操縦って、そんなにすぐできるようになるモノなの?」 「さあ……二日じゃムリな気がするぜ、やったことないから判らないけど」 「ですから」とオーが進み出た。「オーが、致します。船の操縦も機械操作の一種。オーの方が覚えが早いはずです」 「おおっ」 思わぬ申し出に、駄洒落みたいな声を俺は上げてしまった。オーはそれを聞いてうっかり吹き出した――ように、見えた。調子よくオッサンがその肩をポンと叩く。 「うむ、頼むぞ、オーよ。では今夜は港町に宿を取ることにしようかの。我らも今日明日の内に船旅の支度を整えるのがよかろう」 「うわあ、すっごいね、オーがお船動かすんだ? 後でわたしにも教えてね?」 それだけはやめておけ、と、オー以外の全員が声を揃えた。 かくして一両日の行動方針は決定した。俺たちはまず揃って船舶事務所へ向かい、停泊している船を軽く見せてもらった。想像していたよりもずっと古いものだったが、よほど大切に扱われてきたのだろう、型の古さの割にはとても綺麗だった。各船室も広く、厨房や厠等の生活スペースも整っている。長い旅にも充分に耐えられる造りだった。使い古しではあるが、布団だの包丁だのといった日用品が備え付けてあるのも有難い。いくばくかの買い足しはどうしても必要だろうが、随分助かりそうだ。 操縦士がいない、という事情を聞くと事務所の若者は呆れたように目を丸めたが、オーが操作の教示を願い出ると快く引き受けてくれた。そのオーを船に残し、俺たちは町へ出て宿の確保に向かった。 部屋は二つ取った。つまりは野郎部屋と婦女子部屋だ。宿帳に記名し、部屋に荷を下ろして身軽になると、俺たちは一旦バラけて商店街の探索に赴いた。来たる長の船旅に向けて物資を調達する必要があるからだ。と言ってもまずは価格調査のみだ。それぞれが別の店で品揃えと実勢価格を確認し、その結果を付き合わせた上でどの店で何を買うかを決定すると言うのが、財布を握る姐さんの方針だ。入念な下調べと綿密な計画の下に於いてのみ、あの財布は口を開ける。姐さんは金にやたら細かい。 俺は目に付いた乾物屋に入り、棚に並ぶ品とその価格を手帳に走り書きで残した。店のおかみさんがちょっとイヤな顔をしたように見えた。姐さんと組むようになって以来、この手の白い眼差しにもすっかり馴れてしまった。それがいいことか悪いことかは別として、だから俺は何一つ買わずに邪魔したなと小さく呟いて店を後にする行為にも慣れっこだ。俺の背中に向けて、ホントに邪魔だよ、とおかみが悪態を吐いた。 そんな風にして雑貨や衣類の店を幾つか回った。個人的に動き易くて丈夫な武道着が欲しいところだが、なかなか思う品は見つからなかった。武具屋でちょっと気に入った手甲があったのだが、正札を見て諦めた。姐さんが買ってくれるわけがない――なんだか女房に手綱を握られる亭主みたいな言い草だと気付き、俺は一人で苦笑した。 宿で再会した俺たちは、食堂で鍋を囲みつつ、それぞれの調査結果を披露した。姐さんは皆のメモを真剣に吟味し、明日の『お買い物リスト』を作成した。 「あのさ、俺の装備なんだけど」 控えめに俺は申し出てみた。軽くて使い易そうな手甲が、そこそこの値で売られていたんだが、と。ちなみに現在身に着けているのは武具と言うより防具に近い革製のもので、姐さんに出会う前から使用している。 「そこそこ?」 姐さんの目が鋭くなった。指を何本か立てて価格を示すと、素っ気無く却下された。 「ムリよ。それ以前に必要ないでしょ、素手だって充分なくらい強いんだから」 そう言われると予想はしていた。俺の拳を買ってくれるのは有難いんだが、せめて少し迷う振りくらいしてくれてもよかろうに。 女性陣は食後にのんびり一風呂浴びるのだと、連れ立って女湯へ向かった。この宿は何でもいい湯が湧くらしく、終日営業の大浴場が設置されている。オッサンがそれではワシもとか言いながら男湯へ向かったので、俺は一人部屋に戻った。床に就く直前に、さっと浴びるくらいで俺は充分だ。 嫌煙家のオッサンがいない隙に、受付で買った煙草に火を点ける。後で文句を言われたくないので、開け放した窓の際に寄り、煙はなるべく外に流してしまうようにする。オッサンは大抵風呂が長いから、まだまだ帰っては来ないだろう。 と思ったら、早々に扉が叩かれた。やけに早い。のぼせでもして出て来たのだろうか。 「オッサンかい? 開いてるぜ」 慌てて煙草を揉み消しながら言うと、開かれた扉の隙間から、予想に反して姐さんが滑り込んで来た。湯上りそのままって感じの洗い髪を肩に垂らしたままで、普段と随分違った印象だ。 「どうした?」 「お師匠、まだよね?」 「ああ。まだまだ来ないと思うけど――」 「よかった」 「どういうことだ? そんな誘いがましいカッコで。ナンなら念を入れて鍵でも掛けるか――場所を変えようか?」 からかい半分の俺の台詞を、まるで聞こえちゃいないといった様子で鮮やかに無視し――本当に聞こえていなかったのかも知れないが――、姐さんは手近にある寝台に腰掛けて俺を睨んだ。 「アンタ、お嬢ちゃんをどうこうしようとしたことはないわよね?」 「あん?」 姐さんの言う『どうこう』が『どう』なんだか俺には最初解らなかった。つまり、お嬢ちゃんってのは俺から見てそういう娘だってことだ。 「するわけねえだろ、いくら何でも俺ぁそこまで道を外れちゃいないつもりだぜ」 その『どうこう』の意味に思い当たった俺が言うと、姐さんは深刻な顔で頷いた。 白状するなら姐さんのことは『どうこう』しようとしたことがある。と言ってもアポなしで寝室にお邪魔しただけだ。あの時の宿は全員個室を取っていて、ま、それをいいことに忍び込んだわけよ。未遂で終わったのはまんまと返り討ちに遭い、危うく黒こげにされるところだったからだ。このネェちゃんにだけは――あらゆる意味で――手を出すまいと、あの時俺は固く決心したもんだ。 「つまり、お嬢ちゃんの肌は見たことが無い、と」 「たりめーだ」 「じゃあ――知らないのね。私だって今知ったもの。きっと本人も気付いてないわ。自分じゃ見えないんだもの」 「姐さん?」 「お嬢ちゃんにはね、勇者の紋が出ているのよ」 また、言われたことが解らなかった。黙ったままの俺を前にして姐さんは見て来たことを話してくれたが、それもたださらさらと耳を流れて行くだけのように思えた。 「私もあの子とお風呂に入るのなんて初めてだから、見たことがなかったの。彼女が湯船から上がる時に見えたんだけどね、腿の裏側って言うか脚の付け根って言うか。場所が場所だからまじまじと見るわけにもゆかなかったけど、あの紋、間違いないわ」 ほぼ聞き流したその言葉を、頭の中でもう一度繰り返してみた。 「つまり、なに? 嬢ちゃんの腿って言うか尻って言うかそういうところに、あの石ころと同じ紋章がついてるわけ?」 「そういうことよ」 「なんで? 嬢ちゃん勇者なの?」 「わかんないわよ。しっかり確かめたわけではないし、それに、勇者の紋って、普通は利き腕の手首に出るものなのよ」 そう言うと姐さんは腕組みをして考え込む姿勢をとった。見間違いだったのではないかと自らの記憶に疑問でも抱いているのだろう。 「それは――」眉間にみるみる皺を寄せる姐さんを見兼ね、俺は言った。「オッサンの領分だろ。何か知ってるんじゃないか、あのひとなら」 「ダメよ」 とんでもない、と姐さんは大袈裟にぶんぶん首を振った。 「わざわざお師匠の不在を狙ってアンタに相談してるのよ、私は。お師匠の耳にそんな不確定情報が入って御覧なさい。まず見せろって言うに決まってるじゃないの」 ああ、と俺は合点した。まあ、言うだろな、そりゃ。 「お師匠はその辺りのデリカシーってモンを持ち合わせてないからね。お嬢ちゃんの下穿きを引き摺り下ろすくらい平気でやるわよ。同じ女性として、それは許せません」 自分こそあまりデリカシーがあるとは思えない蓮っ葉な口調で、姐さんはきっぱりと言った。だからって、と俺は思う。 「だからって俺に相談されても」 「そこよ。アンタなら私たちよりお嬢ちゃんとの付き合いが長いじゃない? 何かこう、あの子の素性にまつわることを知らないかと思って」 俺は黙って首を振った。ニベもないと姐さんは非難したが、無い袖は振れん――少々言葉の使い方が間違っている気もする。 「知らないんだよ、本当に。生まれも歳も本名も何もな。お嬢ちゃん自身が知らないんだ、しょうがないだろ」 嬢ちゃんは記憶喪失だ。俺と出会った時には既に、過去の思い出と言うものを一切持っていなかった。 どうやらずっと眠っていた――或いは閉じ込められていたお嬢ちゃんを図らずも陽の光の下へ引きずり出したのが、俺なのだ。 半年ばかり前になるだろうか。俺はその頃まだ一人で大陸をぶらぶらしていて、偶然にあの廃墟に差し掛かった。案の定巨大な甲虫だとか害獣だとかが棲み付いていたが、その手の場所ってのは大抵お宝のひとつも放置されているものと相場が決まってる。俺はそれを目当てに廃墟に入り込んだ。おあつらえ向きな結界の張られた部屋を見つけるのにそう時間はかからなかったが、それを破るのには一昼夜を費やした。 その中にいたのが、嬢ちゃんとオーだ。 扉を蹴破ると、どうやらそれが動力の切替と連動していたらしく、まずオーが起き上がった。あんな機械人形なんて目にしたのは初めてだったから、俺は危うく腰を抜かすところだった。そのオーが緩々と石棺の蓋を持ち上げると、その中からお嬢ちゃんが欠伸をしながら出てきたと、まあそう言う経緯だ。 オーは嬢ちゃんを起こすとぷっつり糸が切れたみたいに動かなくなった。再び起動させたのは嬢ちゃん自身だ。背中にぴょこんと飛び出した突起を押し込めると、それがやっぱり動力のナニかだったらしく、オーは立ち上がって嬢ちゃんの前で膝を折った。後で聞いた話では、動力を入れた人間が主と認められるよう設計されているとのことだ。 オー自身もまたそれ以前の記憶を持っていない。ヤツの場合は単純に、動力が入っていない間は記録装置が働いていないからだと言う。だからあの二人があんな所に閉じこもって何をしてたんだか、或いは何を『しないように』してたんだか、今となっては誰にも判らないのだ。 「ちょっとちょっと」姐さんが目を剥いて俺の話を遮った。「あのお嬢ちゃん、そんな仰々しい隠れ方をしてたわけ?」 「隠れてたのか隠されてたのか判らんがな」 「ますますもって怪しいじゃない。やっぱり勇者絡みなのかしら」 「何でだよ。勇者サマが何だってこそこそ結界の後ろに隠れる必要がある?」 姐さんがまた言葉に詰まった。俺だって同じだ。そんな出会い方をしたわけだから、あのお嬢ちゃんに何かあるだろうとは思っていた。だからってよりによって勇者の紋なんてのが出て来るとは、努々考えもしなかったのだ。 「魔法は――どう?」 はっと顔を上げて姐さんが訊いた。俺は首を傾げて訊き返す。どう、とは。 「お嬢ちゃんのあの魔法、どうやって習得したの?」 「知らん。最初から使えてたみたいだぜ――って、ああ、そうか、記憶喪失なのに、か」 「目覚めてから習得したわけじゃないのね。元来魔術師だったってこと」 「そうなるのかな。なあ、だけどそんなもんなのか? 魔法って」 そんなもんよと姐さんは決め付けた。 「アンタだって、例えば頭打って自分の名前を忘れたとして」 言いながら、ぶんと風を切って拳を俺の目の前に突き出す。咄嗟に俺は眼前に開いた掌で受け止めた。 「これくらいのことは無意識に出来るでしょう」 ね、と笑いながら姐さんは拳を引っ込めた。なるほど感覚で解りやすい例えだ。これで相手が姐さんでなかったら、それこそ無意識に投げ飛ばすくらいのことはするだろう。習得した技術ってのは、そういうもの、なのだろう。 「勇者ってのは、魔法は使うのか?」 恥ずかしながら、その辺りの知識が俺は皆無だ。魔術師、学者、武道家、剣士、これらが職業であり技術であるのに対し、勇者ってのはステイタスだ。少なくとも俺はそう認識している。勇者を勇者たらしめるものが件の紋章以外にあるのか無いのか、俺は知らない。そして、勇者でありながら魔術師を営む、なんてことができるのかどうかも。 「術は使うけど魔法は使わないと言われているわ」 またややこしいことを言う。姐さん曰く、勇者には所謂魔術師のような魔力は備わっていないそうだ。その代わりに、紋章を持つ者にしか操ることのできない術を、幾つか習得すると言う。 「じゃあ嬢ちゃんは勇者じゃないことになる、のか?」 ワケがわからなくなってきた。俺は姐さんに断り、新しい煙草に火を点けた。スウと吸い込むと不健康な煙が肺へ渦を巻く。手にした煙草の先端からは、逆に天井へ向かって立ち昇る。次の一口を俺は舌先で丸め、ふうと上を向いて吐き出した。 姐さんは紫煙の動きを不思議そうな顔つきで眺めていたが、やがて思いついたように言った。 「オーは、お嬢ちゃんの持ち物だったのかしら」 「どうだろうな。あの廃墟が嬢ちゃんの自宅なのかどうかも判らないし」 崩れかけた灰を弾き落として、俺は再び煙草を咥えた。 お嬢ちゃんもオーも、一体いつからあの部屋にいたのか今となっては誰にも判らない。一緒にあの中に入ったかどうかも不明だ。とするとあの結界だって、嬢ちゃんを封じるためのものなのかオーを封じるためなのかも怪しくなってくる。そうだ、オーだって、あれだけ精巧なカラクリだ。少なくとも俺はあいつに匹敵する程の機械人形を見たことがない。コトによっては、結界を張って隠しておく価値もあるんじゃないか? その思い付きを話すと、姐さんも一理あると頷いた。 「そうね。さっきの話だと、結界がオーの動力と連動しているってことでしょう?」 「いや、そうじゃないかと推測しただけだ。偶然かもしれない」 「オーはその時の記憶はあるの?」 「ないらしいぜ。嬢ちゃんの石棺開けたことも覚えてないみたいだ」 つまり嬢ちゃんが動力を入れるまでの記録が残っていないと言うことだ。俺もさすがに気になって本人たちの素性を問い詰めたので、その辺りのことは結構詳しく訊いた。ちなみにオーと言うのはヤツの型番の頭文字らしく、その情報は記憶装置に初期値として入力されていたとのことだ(オーの申告通りだ、意味は俺には今ひとつわからない)。 「型番がついてるの? 量産されてたのかしら」 「どうだろうな。同じような型を見た試しがないぜ。一品モノでも型番くらいつけるんじゃねぇの?」 「そっか……。製造販売ルートからオーの出所が判ればと思ったんだけどな」 いつもより随分子供っぽい口調で、姐さんは悔しそうに爪を噛んだ。 「いや、発想としてはイイんじゃないか?」 慰めるつもりでもないが、俺は姐さんの思いつきに賛同する。しかも、その場合一品モノの方がむしろ都合が善い。誰がオーを――ヤツが売り物だったとして、だが――買い取ったのかを何とかして突き止めれば、持ち主かも知れないお嬢ちゃんの身元も知れるんじゃないか? 「その何とかして突き止める、が難しいじゃないのよ、一品モノだったら」 「そうかな。なあ、世の中に機械人形を作ってる工場ってのはどれくらいあるんだ?」 「有名な製造元は数社だと思うけど、工作機械とか農耕用を含めれば結構あるわよ」 はぁ、と俺は感嘆の息を漏らした。そうなのか。俺の生まれは由緒正しき剣と魔法の王国なので、そういった先端技術には疎いのだ。姐さんはそんな俺に追い討ちを掛けるように続けた。 「有名メーカがあれだけの精巧なものを作ったんならもっと大々的に発表しているだろうから、オーはおそらく小さな工場か個人製作ね。一体しかないとすれば、本当に名も知られていない技術者が道楽半分に作ったのかも」 「そんなじゃ捜しようがないぜ」 「そうよ。だから、このセンから彼らの正体を探るのは諦めましょうか」 それより、と姐さんは口調を改めた。 「気になっていたのよ。あの石。こうなるとやっぱりお嬢ちゃんが絡んでいるんじゃないの? 例えば、勇者と何らかの関係があるとして、お嬢ちゃんが無意識に生み出しているとか、あるいは彼女を守っているとか。ねえ、あの石はどうやって現れたの?」 「何で嬢ちゃんを守る石に俺様が狙われるんだよ」 俺だって嬢ちゃんを守ってるつもりだ。憮然として言うと、姐さんは僅かに視線を鋭くした。 「じゃあ、他に心当たりは?」 「実は――ある。もっと明確な敵意を、あからさまに宣言された」 姐さんは俺に向けた目を益々光らせて、白状なさいと無言で命じた。 |
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